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吼える月
第29章 変現
リュカは誤解しているのだ。
その印は、必ずサクが見れる…そんな関係になったのだと邪推している。それは、呪詛を鎮めようとしていた自分を、リュカが見ていたからなのかも知れない。鎮呪に限らず、抱き合う仲になったのだと。ふたりは思いを通い合わせたのだと。
リュカ……違うんだ。俺は……。
同時に――。
こんな印を見せつけるほどに、リュカはユウナを想っているのではないかとも思う。こうして、リュカを妬む気持ちを抑えつけられない自分と同じように。
どうしてもただの嫌がらせのようには思えなかったのだ。リュカの…悲しい自己主張のような気がしていた。
これは、リュカの嫉妬だと……サクの直感が告げていた。
どんなに裏切って、自分達との仲をなかったことにしようとも、ユウナに呪詛をかけようとも、リュカにも手放せない……ユウナへの"想い"があるのだ。
やはりリュカが作ってきたもののすべては嘘ではないのだと、それがなにか嬉しく思いながらも、もしも、リュカがそんな想いを抱えているとユウナが知ったら、どうなるだろうとも思う。
ユウナは、リュカを最後まで拒むだろうか。
……いまだ愛情を捨てきれぬその人を。
「っ……!!」
嫉妬の奔流に囚われ、サクは歯軋りをしながらもがく。
なまじ……中途半端にユウナと肌を重ね合ったばかりに、育っている独占欲は、サクが思っている以上に大きかった。
ユウナが好きだから、ユウナを自分だけのものにして、自分だけのことだけを考えて貰いたいという気持ちがあるからこそ、リュカが、どんな思いでユウナの胸に己を刻んだのか、それが容易に想像出来てしまう。
自分はここにいる。
ユウナを渡したくない――。
それはきっと、そんなリュカの主張ではないか。
だからこそ、サクはこう思わずにはいられない。
なぜ……裏切った、リュカ!
ユウナを手に入れられるはずだったのに、愛おしい女性を傷つけて、なぜ敵側になった!