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吼える月
第29章 変現

 

「……言うな……」


 サクは、愛撫をやめて苦しげに言った。



「今さら……言わないで下さい。

俺に……まだ夢を見させて。決定的にさせないで」



「違う、あたしは、あたしはサクを……ぐっ、ああああっ、いやあああああ」


 突然のユウナの悲鳴に、サクは目を見開いた。


「姫様!?」

「痛い、痛い、痛いっ、やだやだ……やだ、あたしはまだ……っ」


 ユウナは泣きながら、痛みにもがき苦しんだ。

 脳天に槍でも突き刺さったかのような激しい痛み。


 この痛みのために……サクに愛を伝えられないのが悔しかった。

 言おうとすればするほどに、サクが遠のいてしまう。意識が薄れる。


「行かないで……サク、サク……っ」


 サクはユウナを抱きしめ、神気を巡らせた。

 だが神気を注ぐ以上に、澱みが巡るのが早すぎた。


「なんで……なんで突然っ!!」

 鎮呪の失敗なら、自分に返るはずだ。

 なぜ、ユウナが悪化した⁉︎


 ユウナの、焦点の合わない目が揺れたと思うと、その瞳の色が紫に変化していく。……妖艶な……魔の色へと。

 呪詛が急に強まったのだと察したサクは、ぐだぐだ言ってられない緊急性をひしと感じた。


 ユウナの意識が薄まってよかったのかもしれない。

 リュカを見る目を向けられていたら、やりにくかった。


 サクは心を静める。

 
 そして――。


「くぅ……」


 ユウナを倒し、その足を持ち上げるようにして、秘部の蜜をなすりつけた肉棒を、蜜が溢れる先へと押し挿れた。



「あぁ……すげぇ」


 サクがユウナの耳もとで呻いて、髪を揺らす。

 薄く開いたその目は、肉棒が伝える快感にとろけていた。



 ユウナは――紫の瞳をしたまま、薄く笑っている。

 それはまるで肉食獣のような眼差しで。



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