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吼える月
第29章 変現
 

 そこからぎらぎらと光らせる目は、快楽に蕩けたものでも、必死に我慢している苦しげなものでもなく、拒絶をしているような……底冷えするような凍てついたものを内包していた。

 快楽を必死に押し殺し、相手を果てさせようとしているサクは、どこから見ても"男"。それでも"女"のユウナに距離を作りながら、冷たくあしらうことで心身の平衡をとっていた。


「俺が恋い焦がれているのは……っ、黒い瞳の……ユウナだけだっ」

 行為に上擦ったような声は、熱さを秘めて。


「あたしだって……」

「お前じゃねぇ。だから……さっさとひっこめ!」


 吐き捨てるように言いながら、サクは抽送を激しくさせた。

 ふたつの身体が大きく揺れ、寝台がギシギシと悲痛な音をたてる。


「ぁああんっ、ああん、あん、激し……あああっ」


 ふたつの悩ましく苦しげな声が、粘膜が擦れ合う音に混ざる。


「はっ、はっ……ちっくしょ……いやらしい……音…っ」


 サクは乾いた笑いを見せながら、ユウナの胎内に澱んだままの邪気を、肉棒から神気を巡らせて、浄化していった。

 だが浄化とは名ばかりの、快楽という名の拷問。

 恋心が募れば、サクに激痛で返り、ユウナの中の邪気が膨れあがる。

 時折、顔を歪めさせながら、両手でユウナの身体をぴったりとつけるようにして持ち上げ、騎乗位の体勢に変えた。


「あ、あっ、深い、突き刺さる…っ、あん、ああんっ、奥に奥にくる!!」


 ユウナは狂気しながら、自らの腰を使い始め、左右に振り始めた。

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