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吼える月
第6章 変幻
「サク、ねぇサクっ!! 汚い、汚いからっ!!」
「汚ければ幾ら俺でも舐めませんよ。俺は親父に似て、生粋の美食家ですから。ん……。姫様、おいしいです。あぁ……桃のようだ」
じゅると音をたてて、時折ユウナの瑞々しい乳房に吸い付く。
その蕩けそうな嬉々とした顔は、本当に甘い桃を味わっているかのよう。
……穢らわしいものに対する、強張った表情ではなかった。
見ているだけでも本当においしそうな表情を、無防備に晒して来るサクを見て、ユウナは驚愕に声を上擦らせた。
「な……なにを……」
実際食せるものを囓っているのならいい。
だがサクが貪っているのは、自分の胸だ。
サクは錯乱しているわけではなく、胸だとわかって唇をつけている。
なんでこんなことになったのかと慌てたユウナが、身を反らして躱そうとすれば、サクまでもが覆い被さるようにして、ユウナの退路を閉ざしてくる。
――姫様、なにするんですか!!
あのサクが。
いつも自分の悪戯に付き合わされ、いいとばっちりにあって共にハンに叱られてでも、決して自分に従順な姿勢を崩さなかったサクが。
あの華々しい武闘会にて、誰よりも目立っていた自慢の……ただの護衛以上の大切な幼なじみが。
いつも軽口叩いて飄々としていて、自分より身長が大きくなれば逆に立場逆転とばかりに自分に意地悪なことをしでかすようになったサクが。
精悍に整ったその顔を艶めかせて、自分の胸に口をつけている。
そういう対象で見たことがなかったサクだからこそ、それは視覚的にもあまりにも刺激的だった。
……体が熱くなる。