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吼える月
第29章 変現
 

「ぐ……っ、初心者に……きっついなぁ……」

「なんで我慢するの……? 一緒に、ねぇ一緒に……」


 ユウナの声が上擦ってきている。

 あと少し。



「姫様……戻って来い!」


 サクは叫びながら、突き上げを早くした。

 子宮口と思われるところを、サクの尖端が叩けば、ユウナの締め付けが強くなる。それを振り切り、サクは汗をかきながらユウナを貫いていく。


「あっあっ、駄目、あっあっあああああっ」


 仰け反るユウナの瞳に、黒色がちらちらとし始め、サクはまたユウナの名を呼んで、意識の底から引き揚げようとした。




   ・
   ・
   ・
  
   ・




 サク、サク、サク――っ!!


 沈んだ意識の底でユウナは叫んでいた。

 自分のものなのに、自分のものではない身体。

 別の存在が、サクに愛を告白して、サクに抱かれている。

 サクがあの色っぽい声を出して、自分には許してくれなかった挿入をしている。汗を垂らした妖艶な顔をして、食らい尽くすくらいの強さで、自分ではない誰かを抱いている――。


 そんなのいやっ!! サク、サクっ!!


 身体の中で、痛みに同調するようにユウナの意識が、肉体から乖離して、深い沼のようなところに沈み込んでいた。

 沼はずぶずぶとユウナを沈め、今は胸のあたりまである。

 どんなにそこから抜け出したくても、なぜか身体が重すぎて沼から浮上できず、ただ頭上に拡がる大きな映像を見ているだけしかできない。


 ここで何度も叫べど、サクには通じない。

 ここで嫉妬に狂いそうになっているユウナの想いに、サクは気づかない。


 そんな顔をあたし以外の誰かに見せないで。

 あたしを見て。あたしにその熱い目を向けて!!


 治療ではなく、心を抱かれたい――。

 ……その想いが、サクを苦しめる呪詛に力を注いでいることを知らずに。
 
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