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吼える月
第29章 変現
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ユウナが一気に果てると同時に、サクの神気も邪気を抑え、ユウナの想いに荒くれだってサクを苦しめた呪詛は、ひとまず鎮まった。
ユウナが眠りに落ちる寸前、彼女は――。
自分の胎内の中で膨らみながら、狂おしく駆け続けた熱い存在が、自分から一気に離れた寂寞に、無意識にサクへの想いをだぶらせて涙した。
そして、涙して眠りについたユウナを見て、サクは――。
果てぬように荒い息をしながら意識のないユウナを抱きしめ、何度もその頬と銀色の髪に口づけ、肩を震わせた。
リュカを想い、恋しくて泣いているのだと。
抱かれたいのは、リュカだと思っているのだと。
ユウナが果てる寸前に聞こえるリュカの声こそ、穢禍術が完全に解けぬように誘導するための核であり、それがわからぬサクは、リュカへの愛に勝れない悲しみに打ち震える。
リュカと――いつもユウナは呼ぶのだ。
身体を繋げぬ時は甘く自分の名を呼んでくれたのに、繋げればリュカの存在がユウナを奪い去る。
ユウナの浅いところに自分はいても、深層にはリュカしかいない。
自分が出来ることは前戯止まりであり、最後まで愛し合えるのはリュカだけなのだと、ユウナがそう望んでいるのだと……そう思うサクは、悔しさに目をぎゅっと瞑って、唇を戦慄かせ……、その唇を、愛おしくてたまらないユウナの唇の端に押しつける。
……唇を重ね合わせられないサクの口づけは、悲哀に満ちたものだった。