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吼える月
第29章 変現
  

 愛するユウナは、無防備にサクの腕の中にいるというのに、そこに意識が…心がない身体だけでは、虚しいものにしかすぎない。


「ユウナ……ユウナっ」


 名を呼んでも、ユウナは目覚めない。


 きっとユウナの見ている夢には、リュカがいる。

 自分を弾いた世界で、リュカに愛される喜びを感じているんだ――。
 
 
 そう思うと、きりきりと胸が痛む。

 この、どうしようもないほどのやりきれなさ。


 だけど同時にサクは、別の自分に問われるのだ。


 "愛とは、身体を繋げることだけか?"


 それを是としたら、サクの今までの想いは虚構となる。

 では、否としたら――。


「リュカ……、俺はユウナを離さねぇ。離せられねぇんだよ、もうここまで膨れあがった想いはなにをしても消えねぇんだ。

……たとえユウナの心がお前に向いていても、そんなの昔からわかりきっている俺は……、それでもお前に挑む決心をしたんだ。昔のように、諦められねぇんだよ…っ、俺の嫁にしてぇんだよっ」


 それはサクの、報われずにいた過去を変えたいという、不屈な愛情。

 溢れる想いは、もう止めることができなかった。



「愛されてぇ――」



 サクは悲痛な声を響かせる。



「リュカのように、愛されてぇ……。

ユウナと…身体も心も繋いで、俺のものにしてぇよっ」


 愛が欲しいと……、サクは一筋の涙を流す。

 まだまだ猛るユウナへの愛を必死に鎮めながら。


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