この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第30章 予感
◇◇◇
ユウナは身じろぎながら、寝台で目を静かに開いた。
見知らぬ部屋。
ここは――。
服を着たままのユウナの身体の上には、サクの青い上衣がかけられている。それを見たユウナは、この上衣を間近で見ながら揺さぶられ、引きちぎるかのように必死に手で掴んでいた記憶が蘇ってきた。
あれは――。
――ユウナ!!
「また…"治療"? また呪詛がぶり返したの?」
サクを危険に合わせる呪詛。
それを鎮めるために、サクと自分は……。
重苦しい下腹部。
熱に掠れたようなサクの声。
間違いない、激しい性交の名残がある。
ユウナは真っ赤になって呻いた。
サクの目が、脳裏に蘇る。
妖艶な目が揺れて蕩けて……冷たい瞳になって。
そして自分は、それに悲しくなって。
治療ではなく、本気で愛し合いたくて――。
「え?」
自分の心と矛盾した記憶に、ユウナは頭を振った。
まるで、自分がサクを好きであったかのような……そんな不可思議な気持ちに、切なさすら覚えてきたからであった。
サクは幼馴染みだ。
嫁にしたいとは言われ、考えてみるとは言って、何度か睦み合うようなことをしたが、サクに対する恋心はまだ芽生えていないはずなのに。
大事なあたしの武神将――。
恋愛感情はないはずなのに、なぜか恋しくて、泣きたい気分になってきた。
それは、自分の意志がないところで、二度も男女として繋がったゆえの、身体の馴れ合いからか。
それとも――。