この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第30章 予感
「ほっぺもずっと冷やしてたんだけど、まだ、じんじんする…」
「まあ……」
冷やしても、まだ不自然なほどに膨らんでいるイルヒの頬と、唇に、同性のユウナは哀れんだ声を出した。
「テオンに叩かれた後、鏡見てびっくりさ。化粧を白粉の壁を削るようにしてとって何回も洗ったのに、顔の形が戻らないんだ。どうすればいいのか悩んでいるというのに、あいつったら、からかって笑うんだっ」
イルヒはそちらを見ないで、部屋の外を指だけで指した。
「だからあたい、お嬢にいい案を貰おうと、ここで待ってたんだ……」
そこから現れたのは――。
「小猿の化粧…くくく、あはははははは!」
腹を抱えて笑い転げるサクだった。
「おはようございます。このイルヒの顔! 朝からどっきりでしょう? この上に白粉と頬紅までしているのなら、テオンが気の毒で気の毒で。あはははははは!」
「どっきりなのは猿じゃないか! なんで朝早くからここで、寝転がってもぞもぞしてるんだよ!」
「鍛錬だよ、鍛錬!! 武神将たるもの、1日だって鍛錬を欠かすこと……姫様、どうしました?」
「お嬢!?」
サクとイルヒは、泣きだしたユウナに、慌てた声を出した。
ユウナは涙声で言った。
「よかった、サクに置いて行かれたかと思った……」