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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
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緋陵国――。
倭陵大陸南方に位置し、火山を抱える高温多湿の国である。
元々この土地は、火山が大噴火をした際に生じた、沢山の溶岩に覆われた灼熱の危険地帯だったが、緋陵を鎮護する神獣朱雀が岩の溶熱を消して、民が住めるようにしたと言われており、緋陵に積み重なるように無数に散在する、黒く焦げたような岩は、溶岩の名残とみられている。
南端にある台地は人が住みやすいように平坦な高台に整備され、そこには民がひとつに固まって住む唯一の大きな街"朱須(しゅす)"と、朱雀殿があるのだが、それ以外の土地は、歩くのも困難な大きな溶岩の残骸だらけのものとなっている。
緋陵は、倭陵一神獣信仰が篤い国でもある。
人の住める国とした朱雀が、祠官と武神将に女を所望したことから、男に対して排他的な国となり、後に女だけが住まう国となったとされている。
そのため、男が緋陵に侵入しないように武神将が結界を張り、倭陵で取り決められた行事の開催や、許可した女商人以外を弾いているために、その歩きにくい地形と共に、緋陵が閉鎖的になる一因ともなっている。
緋陵の主な特産は、倭陵における武器となる鉄と火薬であり、岩の奥に拡がる鉱山を掘るのも女の稼業。また武器の精錬と銃の扱いは、倭陵一の技術を誇ると言われている。
緋陵の女達は荒々しい。緋陵で男を見つければ、たちまち凄惨な拷問を加えたり、女の性欲を満たす性奴としてしまう。
子孫繁栄のために、年に数回、外から男を調達して女達は交わるが、生まれた子供が男だった場合には、他国に売られる。尚、女達が交わった男達が、その後どうなったのか、それは緋陵のどの記録にも残されていない。
~倭陵国史~
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