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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
とにかくも、あまりに漠然としすぎる炎の鳥の情報を得ようと思えば、朱雀の祠官や武神将を含めた住民と接する必要があった。
そして、接するためには、男であることを隠すか、緋陵が唯一男を招き入れる武闘会に参加するか、はたまたサラの身内だということを含めて正直に言って、好意的な歓迎を期待してみるか、それともハンのように力尽くで戦いを制し、願いを聞入れて貰うか…そんな選択肢しかない。
なんにせよ、イタチを助ける期間はあと9日。しかも出来るだけ早く目覚めさせて、ゲイの再来の危機にある蒼陵に戻らねばならない。
最短でイタチを救う難題に取り組むためには、緋陵の住人達との戦いも辞さぬ覚悟で、とにかくこの国の長に会わねばならないという、意見にまとまった。
どのような方法で接見するのがいいのか。
出来るだけ、朱雀の武神将の結界にひっかかりたくはない。女の国に侵入しようとしている不審者だという目で見られての対面であれば、今後のやりとりが困難になりそうな予感を、誰もが感じるゆえに。
まずは、一番の安全で正当な策である武闘大会が開催されるのであれば、前回も開催された…高台にある武闘会場になるはずだから、その状況がどうなっているのか確認しようということになった。
「じゃあ今日のところは寝ようか。明日朝早くに出かけよう。僕はちょっとこの国の地図を作りたいから、僕が見張りを……」
「テオン、地図を描くなら、オレと見回りに来い」
立上がったシバが、見下ろすようにしてテオンを誘う。テオンが祠官であろうとなかろうと、シバのテオンに対する態度は【海吾】の時と同じらしい。