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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
 

「え!? シバ、だから僕は地図を……」

「地図を描くなら、自分の足で回るのも必要だぞ? お前、祠官になりたいんだろう? だったら自分の目で色々見て回れ。【海吾】の掟もそうだったろう。海を知るには、海に出ろと」

「ん……確かに一理あるね。地図はいつでも書けるし。じゃあ僕、この土地を把握するために、シバと……」

「あたしも行く!」


 ユウナは手を上げて、薬草だらけの足で立上がった。当然ボタボタと貼り付けていた薬草が落ちる。

 蒼陵で色々と活躍したユウナだったが、たとえ山の国黒陵に生まれたといえども、箱庭で育った世間知らずの姫。たまにハンにサクと山で遊んだことがあるといえども、そこそこ足場はよかったのだ。こんな大きな岩を、全身でよじ登るようにして初めて進み続けたことで、特に足が疲労しすぎてしまい、サクに無理矢理揉んだ薬草をつけられていたのだ。

 シバがテオンに言ったことが真の祠官の条件なのなら、祠官になりたいユウナに対する助言でもある。疲れたなどと早寝している暇に、少しでも情勢を自ら把握しろと言われたようで、ユウナは疲れた足を引きずってでも、テオンと共に歩こうと意気込む。


「姫様、なんのためにここで休むと? これも明日からに備えて……」

「サク。あたしやテオンみたいな女子供がいるから、危ないという理由はあたし嫌だわ!」

「お姉さん、僕……一番年上なんだけど……」


 子供扱いされたテオンが抗議したが、ふたりから見事に無視された。

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