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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
「しけた面って……」
図星を突かれて、サクの瞳が焚き火の炎のように揺れる。
「ここに海があるのなら、海面に顔を映してこいといいたいところだ。お前が思っている以上に、お前は女々しい。だから直して、しゃんとしろ!! 以上!! テオン、行くぞ」
「う、うん……じゃあね……」
「気をつけていってらっしゃい!」
ふたりの会話の核がわからないユウナもまた、自分が置いて行かれたことに少しいじけながらも微笑んで手を振った。
そして、残されたふたり――。
パチパチパチ……。
炎の爆ぜる音だけが、静寂な夜に響き渡る。
シバとテオンはどこまで行ったのか、動く物音はまるで聞こえない。
パチパチパチ……。
ふたりの間には会話がない。
サクは、ユウナに対するやりきれない想いを、集団行動で気を紛らわせようとしていたのに、急にふたりきりにされてしまえば、距離感が掴めないままに、いつも通りの態度をどうやってとればいいのかわからなくなり、内心焦っていた。
そこまで、サクは傷心して思い詰めていたのだ。
――お前が思っている以上に、お前は女々しい。
そんなこと、シバに言われなくてもわかっていると、サクは唇を噛む。
手を出せないままに年月だけが去って、この年だ。
だが昔のように、ユウナのことを諦めたくないのだ。
ユウナに気持ちを伝えて、無理矢理ではなくユウナに振り向いて貰えるように頑張りたいと彼女に宣言もしたし、実際睦み合いのようなもので想いを乗せて愛でることもした。
昔と環境は変わってきたと思った。些細すぎる変化かもしれないが、鈍感なサクとて、ユウナが自分を男として意識している部分がでてきたと気づいたというのに……、あの夜に、今まで育てていた微かな希望は、打ち砕かれた気になった。
――リュカぁぁぁぁ!!