この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~


「いつもなら……治療だろうが治療じゃなかろうが、目覚めたら近くにサク、いるじゃない! それなのに、サクはいなかった! そう考えたら、嫌われる原因は、"治療"しかないじゃない。嫌だったんでしょう!? だったらもういいよ、あたしサクにもう頼まないから。今までどうもありがとう! もうこれからは……もごもごごご!?」


 ユウナが途中で言葉を途切れさせたのは、サクがユウナの口を手で押えたからだ。怒りに満ちたような険しい眼差しで、ユウナを射抜く。

 
「本気でそんなこと言っているのなら、俺怒りますよ」

「もご、もごもごもご(だって、あたしのこと嫌ってるじゃない)」
 

 ユウナは頬を抓られた痛みで、サクが言っていた言葉は"リュカ"しか聞いていなかった。それがわからぬサクは、素通りされた自分の"好き"を憂えて、悔しさに唇を噛んだ。


「天然なのかわざとなのかわかりませんがね、この姫様は……本当に俺を振り回すのがお好きなようで」
  
「もごもごご、もごご(振り回されているのは、あたしよ)!」

「それとも……俺を試しているんですか?」


 サクは嘲るように笑った。


「それとも……俺の想いが邪魔になって?」


 悲痛な翳りがサクの顔を覆っていた。


「言ったじゃねぇですか、俺とのこと……考えてみるって。それなのに、なんですかそれ。俺……、そんな男に思えるんですか?」


 泣き出しそうなその表情に、ユウナは思わず息を飲む。


「なんにも伝わってませんか、俺の想い……」


 どくん。


 ユウナの心臓が跳ねた。

 脳裏の奥に、靄がかった…なにかの輪郭が見えた。


「姫様の武神将になった覚悟、全然伝わってませんか!?」


 サクの荒げられた声によって、それが見えなくなっていく。



「俺の目を見て下さいよ、姫様。俺、姫様を嫌ってますか!? 姫様を女として嫌悪しているように見えますか!?」


 代わって見えるのは、サクの熱く滾る黒い瞳。

 ……ユウナの胸の内を熱くさせる、そんな瞳。


 
/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ