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吼える月
第6章 変幻

 だが、駄目だ――。

 それは許されない、すぎた願い。


 恐怖に引き攣った、蒼白なユウナの顔。

 それは見るのも耐えがたいほどの、蹂躙の後遺症。


 それを植え付けたのは、金と銀――。


「姫様、大丈夫。大丈夫ですから……俺を見ていて下さい」


 サクは怨恨を忌まわしい色にぶつけて暴れたいのを必死に堪え、ユウナに優しげに微笑みながら、花弁を割り花芯を指で擦った。


「――っ!!」



 快感など感じる余裕はないのだろう。

 明らかに恐怖が勝るその表情は痛々しい。


 やめようかとも思った。

 だがこの先、もしもユウナが身籠もってしまったら……。


 ユウナを残す身としては、最悪の場合を想定すると心が引きちぎられそうになる。



「サク……いいよ」


 ユウナは……煩悶するサクを信じ切って、身を任せようとしていた。



「サクは……あいつみたいなこと、しないでしょう?」


 無防備なまでにその美しい肢体をさらせるということは、そこには男として意識されていないのだと、遣り切れなくなってしまうサクだったが、それを表に出さず、ただ怯えるユウナに大丈夫だと言い聞かせて、その指を膣の入り口に宛てた。


「やっ!!」


 拒絶。


「ち、違うの!!」


 そして受容。理性と本能がせめぎ合っているのだろう。ユウナはサクの手を挟んだまま両足を閉じ、サクの首に手を回して抱きついてくる。

 彼女自身、心で体を制御出来ずにいるようだった。


「姫様、これは洗浄の一環です。俺はあいつらと違います。信じて下さい」

 
 サクはユウナの頭に唇を落とした。


「俺は……あんな浅ましく、男の欲を姫様に向けませんから」


 侮蔑の対象は、金だけではないことを匂わせて。


「姫様を傷つけたりはしません。だから……もう少しだけ、我慢してくれませんか?」


 サクの目をじっと見つめていたユウナは、返事の代わりに……足を僅かに拡げた。

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