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吼える月
第32章 多難
「でもイタ公ちゃんが玄武とわかった時は、そんな反応は……」
「それとこれとは規模が違うだろうが! おい、テオンっ!!」
「そ、そう……? イタ公ちゃんも十分に驚く要素だと……。シバ、砂ばかりなんだから、危険はないと思うわ。そんなに慌てなくても……」
引き攣って笑うユウナの横を、突如目を細めたサクが動く。
「危険です。姫様、ここにいてください」
「え、サク? 危険って……ただ砂が広がるだけで……えええええ!?」
ユウナが目を見開いて、声を上げた。
テオンの足場が崩れ、砂と共にテオンが沈んでいったのだった。
それだけではない。テオンの向こう奥側から、なにか巨大な鋏を尻尾に持つ、黒い甲羅で覆われた生き物が顔を出し、猛速度でテオンの方に移動したのだ。
「テオン!!」
それをシバが、間一髪のところでテオンの手を引っ張り上げるように高く放り上げ、自らは食らいつこうと高く伸びる巨大な黒い鋏の上を蹴りつけるようにしてさらに高く舞い、テオンを抱き留める。
ふたつの獲物の落下を鋏を拡げて待ち受ける巨大な敵を、追いついたサクが紅色の柄から振り出した長剣で薙ぎ払うと、汚臭を放つ液体を飛ばしながら、切り捨てられた鋏が遠くに飛んだ。
巨大な生物は奇声を上げて、砂にまみれるようにしてずぶずぶと沈む。
シバとの連携が功を奏したのか、鋏を落された巨体は砂にまみれて沈んだ後、その付近に三人が着地しても、もう陥没になることはなかった。
三人がユウナの元に戻ると、ユウナが身を屈めて、テオンに心配げな声をかけた。
「無事でよかったわ! 大丈夫、テオン? 怪我はない?」
その真っ青な顔を覗き込んで。