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吼える月
第32章 多難
「ああ、目で頼れば、この危険な砂漠を万遍なく歩いてみなきゃならん羽目になる。だが……」
「ああそうか。その他の"なにか"を先にみつければ」
サクの言いたいことを察したシバの言葉に、サクはにやりと笑った。
「そうだ。大元をなんとかすれば、この先安全に歩ける可能性が高くなる。逆に言えば、それを見つけた方が、炎の鳥に行き着く時間が早まるということ」
そしてサクは拳を軽くシバの胸に押し当てた。
「目に頼らずとも、お前は気配だけでも動けるよな?」
「あ、ああ……」
「だったら俺の手間は半分だ。幸い、あの蠍は武器で倒せる。朱雀の民がどこかに居るとしても、朱雀の力を俺達なら感じ取れるはずだ」
ユウナとテオンはふたりの会話を聞いて、顔を見合わせた。
「あたし達は……」
「姫様達はそこにいてください。ここから先は、神獣の力を持った俺達が……」
その時だ。テオンが砂漠に"なにか"を見つけて、飛び跳ねた。
「お兄さん! あそこ、あそこになにか"変なの"が出た!」
サクが慌てて見るが、そこにはなにもなく。
「あれ、消えちゃった……」
「テオン。お前砂漠の熱にやられちまったか?」
「そんな……なにか大きい岩みたいのが現れたのに」
「サク、サク! あっちになにか見えたわ!!」
「あ、本当だ! 今度はあっちに現れた!!」
小柄なふたり組は同じ一点を指さすが、大柄な武人ふたり組は、目を凝らしても何も見えず。どこまでも動きのない砂が広がるばかりだ。
「あれ、消えちゃった……」
「本当ね。なんで消えちゃうのかしら」
各々ふたり組が相手と顔を見合わせる。
「どうしてあたしとテオンが見えるものが、サクとシバには見えないのかしら。サクなんて、夜目でも山奥の猿を見つけられるのよ? こんなに明るい砂漠で、"あれ"が見えないなんて」
「どうしてシバは僕が見えるものが見えないんだろう。シバはいつも、船の上から深海魚見つけると、深くまで潜ってその魚を捕えてくるのにさ、あんなにはっきりしたものも見えないなんて」
サクとシバは、意地になって突如現れては消えるという"それ"を見つけようとしたが、その後も見つけることは出来なかった。