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吼える月
第33章 出芽
テオンが言った。
「まとめるよ。イタチちゃんを救うための方法に関して。
1.ラックーを朱雀に戻すこと。或いは朱雀の力を戻すこと。
2."炎の鳥"は朱雀でもわからず、朱雀の武神将か祠官しか知り得ない。
3.炎の鳥がいるとされる溶岩は108あり、すべてを確認して巡ると、最悪で1ヶ月かかる」
皆が頷いた。
「問題点
1."炎の鳥"について、武神将がいないのなら祠官にしか聞けないけれど、その祠官が生きているのか死んでいるのかわからない。こんな砂漠になってしまった当時のラックーの記憶もない。しかも悪いことに祠官は朱雀の力を持たないために、お兄さんやシバも感じ取れない」
「そうね。運よく砂漠の下で生きていたとしても、特殊な力では探し出せないなら、穴を掘るしかないわね。どの程度掘らないといけないのか、わからないけれど」
ユウナが頷いた。
「2.砂の下がいまだ溶岩があるとも限らない。だけど点在している以上、すべてが同じとも限らず、どれかが溶岩になっているのかもしれない。効率的に探す手段が手元にはない」
「オレ達が手分けして探したとしても、その後のことを思えば、明らかに時間の無駄だ。共に歩んでいた方が合理的だ」
シバは頷いた。
「3.ラックーを朱雀に戻すにしても、朱雀の力を奪った張本人をどうすればいいのか。倒せばいいのか、服従させればいいのか。そんな簡単に本人に移譲できるのか。なんだか理屈として考えると変な気がする。僕が読んだ書物では、神獣本体を媒介にして、別の人間に力が移ると書いてたんだ」
サクも頷いた。
確かに彼とハンとの間の力の移譲は、玄武が居たからだと思う。
テオンはラクダをまじまじと見て言った。
「ラックーが、今まで通りすっと力を取り戻してくれればいいけど、ラックーは喋るだけのラクダだものなあ……」
『ラクダだと悪いのか、小童!』
「自信ある? 自分の力を持つ者がいて、それを自分に戻す方法。朱雀だというのなら、それできる? お兄さんもシバも神獣の力持っているのわからないのに、神獣の力、感じ取れる?」
ラクダは汗をかいた。
「駄目よ、ラックー。毛が落ちちゃうわ」
ラクダは、ユウナの声に青ざめた。