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吼える月
第33章 出芽
「それにさ、ラックーのいう通り、ラックーの毛がラックーの寿命を推し量るものだとしてもだよ、二本! 一本はどれくらいの寿命なのさ」
ラクダは首を捻った。
「一本が一年とか一週間ならいいけど、それが一日だったら、朱雀はラックーとして眠りに入っちゃう。そうしたら、必死の思いで炎の鳥みつけても、祝福されないで、宝の持ち腐れ! これ意味わかる!?」
テオンは八方塞がりな状況に憤っているらしい。
ラクダは、テオンの意味を理解したようで、情けない声を出して身体を丸めた。
「ただラックーは役立たずではない。蠍と友達だ。だったら、砂中の探索は、蠍に協力して貰えるかもしれない。ラックー、蠍に頼める?」
『ふ、ふむ……。協力してくれるとは思うが』
「まあ、サクとシバが戦っていたあの凶暴な蠍さんが味方になってくれるのなら、こんなに心強いことはないわ! ねぇ、サク。……サク?」
ユウナは考え込むサクに、首を傾げた。
「いやね……。蠍とラクダが仲良しはいいことですけど、なんでそれを残したのかなと思って。朱雀の力を奪った奴が。これだったら、蠍使って砂漠潜ろうとするの、わかりきっている」
「確かに……」
テオンは言った。
「だったら、罠?」
「……かもしれねぇ。が、テオン。罠は、近づいて欲しくねぇところにあるものだ。だとしたら、罠こそがこの砂漠の中での希望の出芽かもしれねぇぞ」
その時である。
ゴォォォォォと凄い勢いでなにかかが近づいてきたのは。
轟音と共に、甲高い声が聞こえる。
サクとシバは武器を手にした。
「なにかしら……」
「姫様、テオン。ラックーの側に。シバ、用意はいいな」
「ああ」
そして、サクとシバが近づくものに武器を振り上げた時だった。
「きゃははははははは!!」
耳慣れた甲高い声がしたのは。
それは、巨大蠍に乗った……
「サクちゃん、ユウナちゃん、ちょっとぶり~」
ユエだった。
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応援下さる方々へ
感謝の気持ちを込めまして、SSを昨日公開しました。
少しずつ追加をしようと思いますので、より「吼える月」を感じてくだされば嬉しいです。
異世界で皆様も冒険下さいますように。
2016-04-14 奏多 拝