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吼える月
第33章 出芽
静寂に一番に耐えられなかったのは、ラクダだった。
『イーッヒッヒッヒ! 皆が認める馬鹿があの玄武が認めた武神将か。いやいや、まさかこんな馬鹿が玄武の……、まあ襟巻きになるくらいの玄武だからとち狂ってしまったのか、イーヒッヒッヒ! これは愉快だ、まさかあの玄武が、最強と呼ばれる武神将の次にこんな馬鹿を』
延々と続きそうな笑いを止めたのは、サクと熊鷹だった。
「黙れラックー! 毛を抜くぞ!」
ぴぇぇぇぇぇぇ!!
ラクダは静まって独りごちた。
『随分と対応が悪いな、我は朱雀であるのに』
「きゃはははは。このラクダちゃん面白いね、蠍ちゃん」
蠍は賛同したように、持ち上げた大きな鋏をばっちんばっちんと開閉した。
「よし、じゃあ予定をたてるぞ。砂漠に潜れて素早く動ける蠍が俺達の味方になった。この砂漠の下にある正しい溶岩を見つけられるかもしれねぇ。なあ、チビ。蠍はその場所を知っているのか?」
するとユエは、蠍の身体を撫でながらなにやら尋ね始めた。
「ん~、なんか近づけない場所があるらしいよ」
「話が早いな、だったらそこに……」
「サクちゃん、ふたつあるって」
「ふたつ!?」
ユエの答えを受けて、一同は顔を見合わせた。
「ねぇ、ユエちゃん。それはどこの場所にあるのか聞いて見てくれる?」
ユウナの言葉でユエが蠍に尋ねると、蠍は巨大な鋏でふたつの方向を示した。それは大きく左右に離れている。
「だったらラックー。蠍が示した場所は、あなたが記憶する溶岩の場所にあたるかしら?」
『ふむ……。あちこちにあるからの。もっと俯瞰したものを見たいものだ』
ユウナはユエの元に行き、指先で砂に大きな正方形を描き、その一辺を足で踏みつけた。
「ここがあたし達のいる場所だとしたら、そのふたつはどこら辺にあるかしら」
ユエが通訳すると、蠍は考えるような素振りを見せてから、奥側の二点を指した。
「右側の方がちょっと奥ね。どうかしら、ラックー」
『うむ。我の記憶によれば、左の方が怪しい。が、右側のそこら辺は、たくさん溶岩があったと思う』
「つまりは、どちらも可能性があるということか」
シバが腕組みをしながら言った。