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吼える月
第33章 出芽
◇◇◇
一行は、黒陵組と緋陵のラクダ、蒼陵組と白陵の熊鷹に謎の幼女のふたつに別れた。
二組はそれぞれ、巨大蠍が阻まれるという溶岩を目指し、もしもその溶岩が炎の鳥が居るという正解のものである場合、もう一方に合図することになった。そうなったら、合図を受けた片方が駆けつけることにした。
「サク、合図はどうするの?」
「姫様、力に頼ろうかと思います」
それはサクとシバだけが持つ神獣の力。武神将の息子として生まれた彼らは、他の神獣の力を関知出来る。
「シバ、いいな」
「オレはいいが、他国で神獣の力を使ってはならなかったのでは?」
シバは腕組みをしながら首を傾げると、ひとつに束ねてある青い髪が、陽光に反射してきらきらと光りながら揺れた。
「ラックー。俺達は自国の神獣の名誉にかけて、私事で他国でむやみに力を使わねぇ。だが俺達はイタ公を助けると同時に、お前を朱雀に戻す手伝いもしている。だから合図や、危険が迫った時に仲間を守るくらいは、大目に見てくれ」
他国の神獣同士干渉しあうことなく、さらには勝手に他国の神獣が力を振るってはならない。それが神獣の盟約であるのなら、他国のラクダ姿の神獣が許可するのなら、また話は変わる。
肝心な部分の記憶が抜けた、この下品なラクダが真実朱雀だとしても、朱雀の力はない。そんな存在の許可でいいのか、サクにとっても賭けだ。