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吼える月
第33章 出芽
二匹の蠍は、仲がよくないらしい。
それはいつも喧嘩しているユエとラクダに影響されたかのようで、蠍達は遠く離れて歩き出し、テオン達の蠍はすぐに砂の中に潜っていったが、奥側にある右側に向かっているサクとユウナの蠍は、空を上にして外をまだ歩いている。
蠍の動きは巨体なのに俊敏で、人が走るよりも速い。
照りつける太陽が少々うるさいが、どういうわけか甲羅の上は熱すぎるわけでもなく一定の温度で、座る者をぽかぽかと温かくさせる。まるで巨大湯たんぽのような上で三人は会話していたが、ラクダがのろのろと歩いて仰向けに倒れると、突然地響きのような奇怪な音がした。
なにか起きたのかとサクが駆けつけ、そして叫んだ。
「おいラックー、なぜ寝る!」
ぽかぽか過ぎたためなのか、大の字でラクダは寝ていた。この低く轟く音はラクダが発した、ラクダのいびきらしい。サクは白目をむいて音を出し続けるラクダを揺すったが、そのせいなのか放屁されてしまう。
「うわ、くっさー。本当にこれで神獣かよ、これならまだ生きたネズミを食らう野生化しつつあるイタ公の方が品があるじゃねぇか」
「あらサク、イタ公ちゃんは元々お上品よ。見てよ、この白いふさふさ。お風呂に入った時なんて、白い毛が輝くようでより綺麗なのよ」
甲羅の上で足を崩して座るユウナは、うっとりとした顔で首に巻き付いたままの白いイタチの身体を撫でる。
「イタ公がお上品でもいいんですけどね、姫様。イタ公はそんなに近くにいるのに、俺はなんでこんな距離なんですかね?」
サクはふて腐れたような顔をユウナに向けた。
巨大蠍の甲羅の上、サクがラクダに構ってユウナに背を向けていた間に、ユウナはすっと遠くに座ってしまっていたのだ。