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吼える月
第33章 出芽
「詰めても詰めても開きますから、俺は詰めねぇことにしたんです」
「詰めて!」
もっともっと言葉があるはずなのに、こんな子供みたいな。
「嫌です」
「詰めて!」
「嫌です」
「あたしだって嫌!!」
ほろり、とユウナから涙が零れ、結んだ唇が震えていた。
またユウナが自分から離れたことに不機嫌となり、ちょっと意地悪を言っていたつもりのサクはぎょっとする。
「な、なに泣いて「どうして来ないの!!」」
「ちょ、姫「ぎゅっとしてくれないの!?」」
「………」
「………」
「………」
「……ぐす」
「………」
「……ぐす」
「こら、これ以上逃げない」
「え? え? いつ後ろに!?」
「武神将をなめるな、です」
後ろから伸びたサクの両腕がユウナの腹のところにある。
ユウナは、サクに後ろから抱きしめられていた。
「……ったく。こっちが冷静になろうと引いてみりゃ、なんで押してくるんですか」
「お、押す?」
首筋にサクの息がかかり、サクの髪がさらさら揺れて首を擽る。
「くそっ、引けば押されるのが愛ならいいのに、まるで距離が縮まってねぇ気がするのがむなしすぎる。また俺ばかりが空回っていく予感がひしひし」
「え? え?」
「ああ、こんなことなら誰かに女の落とし方でも教えて貰えばよかった。親父はどうやってお袋落としたんだろう」
「え? え?」
サクの手が動き、ユウナの額に指弾きをした。
「いたっ」
「え?じゃねぇですよ、この大ボケ姫様。こっちは昔から我慢に我慢重ねてるのに、この姫様は、人の心かき乱して理性ぶち壊して、面白いんですかね、楽しいんですかね!? そういうの性悪女(わる)って言うんです、この天然!」