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吼える月
第33章 出芽
――それは、自分と同じ"ひとりぽっち"ではないからと、自分と理解しあえないと……僻んでいるだけよ。あたし達は、"哀れみ"でシバと接しているわけではないのに。
理解しあえると、
――……シバ、お前も来るか?
仲間だと、言ってくれた他国の姫と新米武神将。
そのふたりが誘ったこの旅路で、シバは答えを見つけようと思っていた。
自分の生きる意味を。
なにが出てくるのかわからない、危険が伴う旅こそは、人生というものではないか。だったら命をかけて戦って、"仲間"を守ることで、生きる意味が見つかるのではないか。
サクは、生まれた国を必要としなくても、ユウナを守ることを生きる意味にしている。ぶれないサクがユウナを生かしている。
さらにはサクは短い間で【海吾】の子供達が懐き、今まで腹の内を見せなかったテオンを味方にして、誰もができなかった青龍殿に行ってジウを引きずり出した。
自国の神獣玄武だけではなく、青龍や、朱雀のなれの果てのラクダすら、サクを気に入ってサクの言葉に耳を傾ける。
自分ならどうだっただろうか。
サクが無性に羨ましいと思うのだ。腹立たしいから決して口に出して言うつもりはないけれど。
「……バ?」
そこまでの信頼が欲しい。
そこまで誰かを守りたい。
――姫様~!!
サクのように――。
「シバ?」
気づけばテオンが怪訝な顔を向けていた。
それはいつものテオンのようで、暴走は完全に落ち着いたらしい。
「あ、ああ……。すまん、ぼんややりしてた」
「シバがぼんやりなんて珍しいね」
「珍しいのか?」
「うん、だっていつだってシバは既に決定していたことに従って、揺るぎなく動いていた気がするし」
「………」
「その場で思いつくお兄さんとは、真逆だね。シバは冷静で計画的だ」
そうだったろうか。
計画もなにも、いつも子供を守ることだけを考えていた気がする。
「シバには安心してついて行こうと思えるけど、お兄さんは一緒に頑張らないとって思う。別にお兄さんは弱くはないけど、なんか守らないといけない気すらしてくるんだ。おかしいよね、あはははは」
テオンが朗らかに笑うと、自分のことはさておき、サクに関してはテオンの言葉もう頷ける気がして、思わず口元をつり上げた。