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吼える月
第33章 出芽
ユエは蠍に伝えたようだ。
「んーええと、ここみたい!」
「え!? じゃあ文字云々、外部のなんらかの干渉があって進めないのではなく、物理的に砂壁で行き止まりだから、いけないってこと?」
「うーん、文字はあるみたいだよ、ここに」
「どこにさ!」
「んー、なんか似たような壁ばかりだから、蠍ちゃん文字があった場所忘れちゃったみたい」
「えええええ!?」
「こっちのような気がするって言ってるけど、自信ないみたい」
ユエが指さしていたのは、後続に控える蠍のやや右手。テオンとシバからは右斜め後ろ側になる。
テオンがそちらを見ている横で、突如シバが背中にある青龍刀を砂壁のある一点に投げつけた。
「わわわ! なにするんだよ、シバ! たとえ壁だろうと砂なんだぞ、刀と一緒に雪崩のように砂ず……へぇ?」
カキン。
状況に似つかわしくない硬質な音に驚くテオンの目の前で、青龍刀が跳ね返る際に、刃先が粘土のような土をを飛散させた。
「なに、あの白いの……四角い石の角?」
壁から覗く飛び出たような異物にテオンが疑問の声を投げかける前に、シバはさっと動き落ちる青龍刀を手にすると、壁を駆け上がるようにして刀をその異物の上に滑らせるようにして差し込んだ。
「うわ、突き刺さった!?」
シバが方でぶらさがる刀の柄が、シバの体重に耐えきれないと不穏な動きを見せ始めると同時に、シバは壁を蹴りながら柄を握ったまま半回転をし、その際片手拳で壁を叩くと、その衝撃でその周辺の壁が崩れ、異物がさらに飛び出たような錯覚をおこす。
石灰色の、加工された石のようだ。
シバは飛び出た石の上に着地すると、周辺の壁の部分を刀で穿るようにしていく。すると石は続き、シバの前方が通路として拓けた。
レンガ状に組まれた白く四角い石がずらりと横に連なり、庇のような飛び出た作りになっているらしい。