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吼える月
第34章 連携
「この奥にイタ公を助ける場所があるのか、それともここじゃなくテオン達の方がそうなのか……」
サクは、蠍の鋏が示した場所……その汚泥が完全に溶けたそこが、石の扉であること、さらにはそこには蒼陵国でテオンと行った、偽の青龍殿のように、神獣の力を無効化させる働きを持つ符陣が刻印されていることを感じ取った。
サクは符陣が有効かを調べるために、神獣の力を使うことをラクダに申し出た。
『やってみよ』
ラクダの賛同と共に、サクは手を扉に向けたが、そこから玄武の力が出ることはなかった。
「……くそっ、これならシバに合図出来ねぇじゃねぇか!」
「サク、どうしたの?」
「祠官と武神将が協力して出来る符陣が、あの扉にあるんです。どうやらあれのせいで、俺は玄武の力が出ねぇようです」
「まあ! あの光る部分がサクの力を奪い取ってるの!? だったら消せばいいじゃない」
「姫様、ちょっ……」
ユウナは駆けて、石扉を袖で拭った。
「不思議だわ! 模様が消えない!」
サクが追いかけて、ユウナの行動をやめさせる。
「こんなラックーの汚ねぇ鼻水拭き取るなんて……。姫様、それ袖を破いて俺の上着着て下さい」
サクが自らの上着を脱いでユウナに着せたが、ややしばらくしてユウナが慌ててそれを脱いで、押しつけるようにしてサクに返した。
「いらないわ、サクの上着はあたし着ない!」
「なんでですか!」
「だって……」
「なんですか! 俺もラックーみてぇに、汚ねぇと!?」
「違うわよ、だってサクの上着……」
「だからなんですか!」
ユウナは赤い顔をして、両側の人差し指を突き合う。
「だって……、サクに四六時中ぎゅっとされている気分になるんだもの。サクの匂いとぬくもりが……。あたし、サクにぎゅうとされるの好きだけれど、こんなにずっと近くに感じるのなら、心臓もたないわ」