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吼える月
第34章 連携
 


「………」

「………」


「………」

「……だから着たくないって!」

「駄目です、着て下さい!」

「だから……あ……」

 着せられてしまったユウナに、サクが切実な顔をして言う。

「ずっと俺に抱きしめられている気分になって下さい。俺の匂いとぬくもりがいつも姫様にあるように。姫様が意識『あの、いいか?』」

「うるせぇラックー!! 消化不良を増長させるな!!」

『お前はいいのだ。玄武の姫』

「はい?」

『お前は、石の扉の符陣とやらが見えるのか?』

「ええ。はっきりではないけれど、ぼやぁんと薄く赤い光が……」

『小童、お前もそうか?』

「ああ、そうだ。姫様の言う通りだ。青龍殿は青かったから、これは国の基色なのか」

『ふぅむ、お前達……緋陵の符陣も見えるのか』

「え、見えたらいけないもんなのか?」

『ああ。見えぬように、符陣は作られる。見えられたら意味がないからの』

「そう言われれば、そうだよな」


 サクは頭を掻いた。


『それが最強の武神将の息子だけに見えるのならまだしも、姫まで見えるという。姫はこういった術の類いに明るいのか?』

「あたし? イタ公ちゃんが元気な時に、サクやイタ公ちゃんとお話出来たわ!」

『なんと。玄武は姫とも話しているのか。姫は一体……』

「祠官のお嬢様だし、俺が誓いをたててお仕えする、未来の祠官だ」


 サクは自慢げに言った。


「まあ、サク……」

「ですよね、姫様?」

「……ええ。頑張るつもりです、神獣朱雀。他国ですけれど、イタ公ちゃん……いえ、神獣玄武と共に、仲良くして下されば嬉しいわ」


 ユウナもサク同様、ラクダを朱雀として、裾を手で摘まんで深々と頭を垂れる、倭陵で正式となる婦女子のお辞儀をすると、ラクダは喜んだように前足をあげた。


『話を戻すが、祠官の力を引いているとしても、普通は他国の武神将も祠官も、神獣の力を封じる符陣など見えぬはずなのだ。なぜお前が二国も符陣を目に出来たのか、そしてそんなものをなぜ二国作っていたのか、解せぬ』

「そうか?」

『ああ。それに……この自国の符陣、我は見えぬのだ』
 
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