この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第7章 帰還
 
 サラは静かに部屋に戻り、ずぶ濡れになっているサクと姫のために着替えを用意し、今来たような声をかけた。


「サク~、控えの間にいる? あんたの着替えを置いておくわ。姫様の着替えは、姫様が上がったら、呼び鈴ならして。隣室で私が着替えのお手伝いするから」

「お~。さすがはお袋だな、気がきく。実は姫様、長湯でのぼせて倒れちまって、今冷やしてんだよ。大分体温下がって落ち着いたから今部屋に運ぶ。もう着替え頼むわ。俺、その間に風呂に入る」 


 事実を隠し、泣いていたとは思わせない、いつもの口調で。
 
 今ここで追及したいサラではあったが、どうしても心が痛くなる息子の咆哮が耳から離れず、なにもわかっていないふりをしてサクに従った。

 ……サクが入浴中に、サラは密やかに、染髪が長持ちする定着液を私室から持ち出した。

 見事な黒髪だったはずの、姫の変わり果てた髪色に驚愕しながらも、むら染になっていたユウナの生え際など細部を、返された超高級染め粉で補修し、慣れた手つきと手順で綺麗に乾かしたことで、姫の髪が綺麗に黒く染まったことは、サクは知らない。



 そして――。


 今し方、私室に備え付けの籐の椅子に座りながら、難しい顔をしたサクの説明を聞き終えたサラは、暫し黙り込んだ。


 目の前には床に胡座をかきながら、項垂れた濡れた頭をがしがしとかく息子がいる。


 隣の部屋の寝台には、白髪染めにて真っ黒な髪になったらしい姫が眠っている。


 サラはなにをどう言えばいいのかわからなかった。

 語られたことは信じがたいほど目まぐるしいもので、ただ耳を傾けているだけでも、許容する思考が弾け飛びそうになっている。


「祠官を殺したリュカって……あのリュカよね?」

「……ああ。ウチの風呂入って、明日……いや今日、姫様の夫となって未来の祠官となるはずだった、俺の……」


 "親友"


 最後はサクの口から紡がれなかった。
/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ