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吼える月
第34章 連携
 


「ねぇサク……、この文字列すべての逆さま、頭の中でわかったの?」

「はい、そうですが?」

「い、いえ……。なんで頭の中でこんなにたくさんの文字を逆さまにできるのかしら。あたしなら、ひとつずつ文字に抜き出して書いても、時間がかかりそうなのに……。もしかしてサクは、武神将になって本当に頭がよくなったのかしら。……嫌だわ、頭もよく顔もよく強い武神将になってしまったら、あたし今まで通りに、普通にしていられるかしら……」

「どうしました、姫様。ぶつぶつと」

「か、考えているのよ、あたしも色々と。ええと逆さま……」

 サクはハンとイタチによって蓄えられた知識は豊富だが、それを活用できないのが"馬鹿"なのである。文官のように紙に書いてどうのというのは不得意だが、直感に従う想像の再現は優れている。それが玄武をイタチ化に成功したしたゆえんでもある。


「逆さまは、

『いだいなるよねよわがいむちでしあがあてかがみよりなあじむきからめかがみでとりよらいあしきちかりにさとられあことめわれよみらいめわがちでちりようにふうじかがみとしみめきよにかくてしあがあがやぶられしよべつにかけしわがきむむろいめよつどうさせしり』

ですね」


 サクは言葉にしながら、ユウナが書いた文字列の下に、逆から読んだものを書いた。

「この中で、意味が通じるのは……」

『「いだいなる」よねよ「わが」いむちでしあがあて「かがみより」なあじむきからめ「かがみで」とりよらい「あしき」ちかりに「さとられ」あことめ「われ」よ「みらい」め「わがちで」ちりよう「にふうじかがみと」しみめきよにかくてしあがあがやぶられしよべつにかけし「わが」きむむろいめよつどうさせしり』


「ラックーが歌っていた中に、"かがみ"というものがありました。"わがくにはかがみとなり、かがみはわがくにとなる"と」

『なんと、小童。我の歌を耳で覚えたのか!』

「当然だろう、三回も聞いたならいやでも覚えるって。ほら、これでいいだろう?」


 サクは鼻歌を歌いながら、ユウナの字の横に何行かに渡って、歌の歌詞を書いた。
 
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