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吼える月
第34章 連携
◇◇◇
「……解けそうか、テオン?」
腕を組み胡座をかいて座りこんだテオンは、地に指で書いた文字列を凝視したまま動かない。見兼ねてシバがテオンに声をかけてみたが、テオンはシバの声が聞こえていないのか、微動だにしない。
「おい、生きてるよな?」
やはり心配になったらしく、シバは手にしていた青龍刀の刃を地面に突き立て、身を屈めてテオンの顔をのぞき込んだが、テオンが返事のように一度まばたきをしたのを見て、ほっと安堵の息を零した。
テオンは【海吾】の時から、あらゆる面から色々な事象を推定し、子供達にとってよりよい安全策を考える、知略に優れていた男である。集中すると石のように固まることがあるのをシバは思い出した。
シバはテオンは自分より年下の子供だと、ずっと思っていた。逐一説明しなくとも察して先に動ける彼を、シバは年下というよりは同じ仲間として頼れる存在だと一目置いていたのだったが、自分よりもっと年上だと知った今では、より一層そうした頭の回転の速さが窮地を救う手助けになると素直に確信している。
テオンは祠官の息子であったことをずっと隠してきたが、それに対してシバはとやかく言うつもりはない。それを言うならシバもまた、ジウの息子だと隠し続けてきたのだし、それぞれ特殊な父親の血を引いて父親同士が密接な関係であるという点では、シバとテオンもまた、生まれながらにして他人より近い関係でもあり、境遇が似ているせいなのか、なにか情が湧くのも事実だった。