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吼える月
第34章 連携
『朱雀の羽は裏表。我が国は鏡となり、鏡は我が国となる。我が力は水に覆われ、水は地となす。即ち我が力地には及ばず、我が力も地となすが、もとより地はきとなす。我の業火によりて木々の葉は夜に隠れ、眠りもまた闇に消ゆ。田は死、野は無となり、汝らのすは我が手に落ちる。我が尾は目となり、我の頭は尾に向くが、終焉は開始となる』
「この中で、構成が異質なのはここ"我が国は鏡となり、鏡は我が国となる"。反対側からの言い換えは、結局同じ事を言っているだけだ。こうして強調しているのは他にはないね」
「確かにそうだな。強調していることに意味があるのか……」
「だとしたら、強調したいのは"我が国"と"鏡"ということだね。でもね、古文書にも、本当のことを隠すための"文字変換"という技はあるけれど、大体は同じ事を言い換えないのが常。だって強調したら、そこに意味があるとすぐにわかってしまうじゃないか」
「ん、だとしたらこの一文は必要ない……わけはないな。意味があるからこの形で入っている」
「僕はそう思うんだ。だとしたら"我が国は鏡となり、鏡は我が国となる"の部分は"我が国は鏡"と"鏡は我が国"は違う意味を持つということになる。どんな意味の可能性があるのか」
シバは静かに言った。
「文字……か。暗号めいて石に刻まれていた文字は、この歌の文句に従って、文字変換をした結果だというのか」
「うん。文の中で"我が国"とあるものを"鏡"に、元々"鏡"とあるものを"我が国"へと変えていく。だけど見て」
てなとりとむちでいろむむうよりちのもるげしまさめみやがわ
「どこにも"かがみ"も"わがくに"となっているものもない」
「作りたい文にその部分がなかったのか?」
「ああ……、童歌はあくまで変換表であり、該当する部分だけ変換しろと? ……うん、ありえるかもね。だとしたら、変換出来るものと出来ないものがある可能性もあることになる」