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吼える月
第34章 連携
 


 ◇◇◇



 神獣朱雀が意図をもって作った童歌と、石棺に刻まれた文字を反対に読むことで、重なる意味ある単語。

 かがみ――。


 朱雀たるラクダが言うには、嘆願の儀を行うには朱雀殿にあり、"憤怒"を映すらしい朱雀の鏡が必要だという。

 朱雀から力を奪いラクダ化させた原因が、一家を滅ぼして狂い死にしたという元朱雀の武神将ヨンガ=イーツェーがした、朱雀への嘆願の儀にあるとしたら、咎人の石棺の外側に嘆願の内容が刻まれている現状は、ヨンガを支持しようとする別の動きがあったのではないか。

 そうラクダが言うと、腕組をして立つサクが唸るように反芻する。

「鏡ねぇ……」

 母サラから、緋陵の鏡が特殊であるとか聞いたことはなく。ハンから贈られた装飾が施されている手鏡で、いつも身だしなみを整えてはハンを迎えに行く姿を、サクは幼い時から見ていた。

 あのどこでも売っている鏡は、緋陵では意味が違うのだろうか。


「玄武殿でお父様が祈りを捧げる祭壇には、丸い鏡みたいのが置いていたけれど、朱雀殿にある鏡もあんな感じのものかしら」

 またユウナも、特殊な鏡として記憶を辿っていた。

 思い出すと辛くはなるが、父がリュカに殺された時も、すべてを見ていただろう丸い鏡は青白く光っていた――。


 それぞれ思い出を彷彿するふたりが尋ねた先は、長いまつげで風でも扇ぎたいかのように、ばっさばっさと大きな瞬きを繰り返して、少しだけ首を傾げた。


『ほう、玄武も鏡を許可していたのか。あれほど人間に使わせるのは危険だと、反対していたというに』


「へ? 鏡って許可制なのか? 街でばんばん売られてたけれど。日頃特売も出来ないほど、安いものもあるし」

「ええそうよ、ラックーちゃん。特に女の子の身だしなみを整えるのには、必要なもので、あたしも部屋にこんな大きいのやら、掌ぐらいの携帯用の大きさのものまで、いろいろあったわ。他国ではどうかわからないけれど、黒陵では小さい女の子もお年寄りも皆持っていたわ」

 するどラクダは、驚いたように目を瞠り、同時に垂れていた鼻水を地に落とした。水たまりになったところに片足を突っ込んでしまったが、足がねばねばしているのは気にならないようだ。
 
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