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吼える月
第34章 連携
『なんと! 婦女子の身だしなみとな! よくぞそこまでのものに、あの堅物玄武が妥協した。姿を映す以外に、玄武はなにをしていたのだ?』
「なにをって、なんだよ」
『たとえば、我は人が秘めたる"憤怒"を映させた。他神獣はどんな付加をつけていたかなと』
サクは数度瞬きをしてユウナと顔を見合わせた。
「鏡って、姿を映す以外になにか用途ありましたっけ? 姫様、鏡たくさんもっていましたでしょう?」
「あたしは姿を映す以外に使ったことがないわ。あ、光を反射するわね。それでお昼寝していたサクの黒い服が焦げて、焼け死んじゃうと泣き出したことがあったわ」
「……姫様、よく覚えてますね。忘れて下さいよ、そういうことは」
「駄目よ。あたしは全部覚えていたいの。サクのことは全部」
そう笑顔で笑うユウナは、胸の奥にちりとした針で突かれたかのような痛みを感じた。
サクのことで、思い出していないことがあるとでもいうかのように。
ちくちく……。
サクはじとりとしたような目をユウナに寄越しながら、話を元に戻した。
「なあ、ラックー。そんなに鏡って特殊なものか?」
『ああ。なにせ神獣の一部を使うものだからな。それを人間が真似て、粗悪品で姿を確認するだけのものを作り始めた。しかもすぐ割れる。大体……』
「待て待て! 姿を映して割れるのが鏡だろ!?!」
『……なんだ、粗悪品の方を言っておるのか。我の言う鏡とは、神獣の一部で作られており、その神獣の力の色となる。ちなみに我の鏡は赤いのだ。それらをある特殊な加工をすると、石のよりも堅いものに物質化して煌めく。それは人間如きが作り出したものでは、びくともしない強靱さを誇る』
サクは少し考えてから、聞いた。
その特徴はまるで――。
「まさか、"輝硬石"のこと言ってるか?」