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吼える月
第34章 連携
『きこうせき? はて、人間はそういった名称を使うのか?』
「俺に聞くなよ。神獣の一部、神獣の色……。なあ、たとえば青龍はその一部になにを使う?」
『青龍は逆鱗ぞ。逆鱗から青い鏡は作られる』
「………」
『玄武なら甲羅ぞ。甲羅から薄い水色の鏡がとれる』
サクとユウナの脳裏に、寝泊まりした青い青龍殿が蘇る。
そして、黒陵において目にしていたのは――。
「ねぇ、サク。あたし達が目にしていた、中央が武器や鎧にしていたあれが輝硬石だとしたら……」
「ラックー、白に近い白銀色に輝くものだったら?」
サクとユウナはほぼ同時に、自分たちが目にしたものは、本来目にできないものではなかったのかとの疑いを持つ。
『白……だとすれば白虎、よの。あやつのたてがみは、白銀色ゆえに』
白陵を守護する神獣の輝硬石を、その守りがないはずの中央が作っているのだとしたら。或いは白陵から奪いとっているのだとしても――。
「だったらさ、その白銀色のものが倭陵の中央、皇主を守る近衛兵の武具となっているとすれば、白虎は無事なのか?」
『どれくらいの人数か』
「黒陵で見ても、ざっと五百は。恐らくその倍以上は兵士がいる」
『ふむ。仮にそれが白虎によって生まれしものであるのなら、小童の体格が千いると考えれば、数が多すぎる。白虎は今頃力尽きておろう』
「力尽きる!?」
『まあ、玄武と同じだ。死ぬわけではなく、眠りにつくだけだ』
「青龍みたいなものか。白虎が使われていたのだとしたら、白陵はどうなっているんだ、今」
ラクダは答えなかった。代わりに、笑う。
『まあ、悲観することはあらぬ。我達神獣は生命に関われば感じ取れるゆえ』
「ラックー、玄武がこんな状態になっているの知らなかったんだろ?」
『う、うう……』
「まあイタ公も、青龍が寝てることわかってなかったみたいだし、神獣には盟約があるから他国のことはわからないってことにしておく。白虎も気になるが、今は朱雀だ、お前だよ。お前なんとかしねぇと、イタ公道連れになるんだからな、お前ひとりの問題ではねぇことだけ、自覚しておいてくれよ」
『ふ、ふむ。色々すまぬな……』