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吼える月
第35章 希求
◇◇◇
"偉大なる朱雀よ我が命で嘆願す鏡より汝の「きからを」鏡で取り払い悪しき「ちかり」に悟られんことを"
"我は未来を我が地(血?)で「ちりよう」に封じ鏡と民を「きはにかくて」嘆願破られたは別にかけた我が「き」の呪いを発動させたり"
もう少しで解読できるところまで来たのだが、あと一歩の決め手がない。ユウナが助けを求めるように、動かない襟巻きと化した白イタチの尻尾を優しく撫でる。
「このふたつの文には、鏡が出てきますね」
目を細めたサクが、読める形で書かれた解読文を見下ろしながら言った。
「これはきっと、"我が命で嘆願す"るのに必要なんでしょうが」
「そうね。嘆願の儀には、嘆願するものの命と、"憤怒"が映った朱雀の鏡が必要だって、ラックーちゃんは言ってたわよね」
『然り。我は憤怒の神獣ゆえに』
偉そうに言うが、今は鼻の穴が大きい貧相なラクダだ。
「そしてそれは朱雀殿にあった。それがこの石棺になるまでのからくりは置いておいて、その鏡を使うんだとしたらです。汝というのが、ラックーのことだとしたら、ここ」
"偉大なる朱雀よ我が命で嘆願す鏡より汝の「きからを」鏡で取り払い悪しき「ちかり」に悟られんことを"
「ラックーから鏡で取り払ったものは、力……"ちから"じゃねぇか?」
「ああ、そうしたら今の状況とも一致するわね。嘆願の儀で、ヨンガはラックーちゃんから朱雀の力を取った。だからラックーちゃんはラクダの姿で、力も記憶もない。推測が正しいことになるわ」
『ふむ……』
「だとしたら、"きからを"を"ちからを"と読むのなら」
サクは地面に書いた。
き → ち
"偉大なる朱雀よ我が命で嘆願す鏡より汝の「"ち"からを」鏡で取り払い悪しき「ちかり」に悟られんことを"
"我は未来を我が地(血?)で「ちりよう」に封じ鏡と民を「"ち"はにかくて」嘆願破られたは別にかけた我が「"ち"」の呪いを発動させたり"