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吼える月
第35章 希求
「そう考えたら、ヨンガは狂って一家皆殺しをしたと言う割には、武神将の精神を貫いていない?」
「ええ。俺も思いました。"呪い"という単語があっても、嘆願が破れたらという条件づきですし。だとしたら、「ちはにかくて」……そこまで悪い意味じゃねぇかもしれませんね」
「ねぇ、サク。ここのところ、読みにくいわね」
"我は未来を我が地(血?)で鏡に封じ緋陵と民を「ちはにかくて」嘆願「破られたは別にかけた」我が地(血?)の呪いを発動させたり"
「この感じなら、~られたより、~られしの方がいいかもしれねぇですね。それより"ちはにかくて"ですが、もしかして"ち"は、元々の"き"のままでよかったのかな」
"きはにかくて"
「まったくわからねぇ……」
サクは腕組をしながら嘆いた。
「"かくて"というのがなにかしら。書いて? 隠す?」
「隠す……なら、緋陵の国ごと民は隠されているという意味になるな。鏡を使った嘆願で」
「だけどサク。ここは砂漠なのよ? 地下に皆がいるということ? あまり、ひとの気配はしないけれど……」
ユウナがきょろきょろとあたりを見渡す。
字が書いてある、思わせぶりな場所は二カ所。
テオンとシバのところに、民がいるのだろうか。
「ワシもこねぇし、あまり期待出来る展開にぶちあたっているわけではなさそうですけど」
「サク、"きはにかくて"はどうする?」
「こればかりは解答がねぇ。つまづいたら、そこで終わりです。ヨンガは嘆願の儀で、ラックーの力を消したことで、ここは民のいない砂漠の国となった。嘆願が生きているということは、恐らく"悪しき光"とやらにも見つかっていないんでしょう。ヨンガは狂気の沙汰で嘆願の儀をしたわけではねぇ気がする。ちゃんと考えてやったことだ。この棺もまた」
「そうか。なにかしたのは間違いないしね」