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吼える月
第7章 帰還
 
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 忌まわしい色が、体をなぶるように魔手を伸ばす。


 リュカに捧げたかった純潔。

 リュカと歩むはずだった未来。


 それは奇しくも……凶々しい"輝き"を持って、霧散した。


 体が痛い――。


――僕はお前が……死ぬほど憎かった。 


 痛い、痛い、痛い、痛い――っ!!


 激痛が走る体。

 女としての胎内を貫かれ穿たれ、無垢な心身は憎悪に染め上げられた。



――僕は……お前が死ぬまで、憎み続ける。


 ひと以下のものとして、欲の残滓を浴びせられ……あれだけの憎悪を向けられて、なぜそれでもあたしは生きている?



――姫様。 


 あたしは姫じゃない。

 なにが姫だ。


 黒陵を……倭陵を滅ぼす元凶のくせに!!


 あたしのせいだ。

 あたしが、すべて悪いんだ。


 お父様も、優しかった侍女達もすべて。

 お父様が護り続けた、歴史ある玄武殿までも、あたしが滅ぼした。


――ユウナ、ユルサナイ……。


 聞こえるんだ。


 亡者の呪詛が。

 あたしを恨むその声が――!!


――死ねぬ呪いをかけてやる。



 リュカ……。


 好きだったの。

 すごく大切だったの。

 リュカのお嫁さんになれるのを、楽しみにしてたの。


 だけど……。


――苦しみ続けろ、永遠に。


 リュカは違ったんだね。

 リュカをあたしは苦しませていたんだね。


 今、あたしが感じる痛みをきっといつもリュカは――。 



 イタイ……。


 死にたい。

 死なせて。


 イタイヨ、ココロガイタイ……。



 こんなあたしは生きる価値はない。

 皆がいない世界にあたしなど――。



――苦しめ……ユウナ。



 体が痛い……。

 ココロガイタイ……。


 痛い、痛い、イタイ、イタイ、痛い、イタイ、痛い、痛い、痛い、イタイ、痛い、イタイ、イタイ……。



 ああ――。

 この痛みから、解放されたいのに!!

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