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吼える月
第7章 帰還
 

――俺だけは、ひとり残しても平気だっていうのか!?


 サク……。

 あたしは汚いの。もう穢れているの。

 気高くて綺麗なサクとはもう相容れない、そう思っていたのに。


――どこまでも姫様は、


 サク……。

 あたしね、あたし……。



――綺麗な俺の姫様のままです。


 そう言って貰えて嬉しかったの。

 優しく触れてくれて、口づけて貰えて嬉しかったの。


 サクから、変らない"もの"が欲しかったから。

 サクだけは、いつまでも変らずいて欲しかったから。



――俺は、姫様を死なせない。俺はずっと姫様と一緒だ。



 嬉しかったの……。



 サクは一緒に居てくれる。

 サクは裏切らない。

 サクは消えてなくならない。



 サクは変らない。



 死ねないあたしには、サクしかいない。



 それなのに――。

 
――俺は……こちら側にいます。イクのは……姫様だけ。


 ねぇ……どうして一緒にきてくれないの。



 ずっと一緒だって言ったじゃない。
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