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吼える月
第35章 希求
「無理よ、サク! ワシちゃん怯えているわ!」
「男なら、身体を張ってなんとかして来い!! 出来なきゃ丸焼きにするぞ!?」
ぴ……。
『……我も行こうかの』
ラクダは言う。
『我が話した方が話は早い』
ぴ、ぴ、ぴぇぇぇぇぇっ!!
ワシも賛同するように元気に鳴いた。
「でもそうしたら、こっちはこっちで大変よ?」
『またこちらに戻ってくる。少しくらい、耐えよ。玄武の武神将。姫を守っておれ』
「……わかった。頼むぞ、ラックー、ワシ!!」
『あいわかった』
ぴぇぇぇぇぇっ!
巨大なラクダは、巨大な鷹の背に乗り、鷹はのろのろと非常に重そうに低空飛行で飛んで行く。
「大丈夫かしら。ワシちゃん、凄く辛そうだけれど」
「ワシが苦手なラックも我慢して背に乗っているんです、皆非常事態に頑張ってるから、俺も頑張ります」
「あたしも!! 投げるだけで効果があるのなら、ここの骨、皆あの扉にぽんぽん投げつけちゃうわ! なんかもう、気味悪さもどっかいっちゃったわ。こんな骨くらいで、サクと戦えるのならお安い御用よ」
短い銀髪から、サクが贈った白い牙の耳飾りを揺らすユウナを見て、愛おしげに目を細めた。
「……もし、俺がここの状況を打ち破って、打開出来たら」
そしてサクは切なそうに瞳を揺らした。
「その時、俺にご褒美下さい」
「ご褒美?」
「はい。俺が欲しいものを、ひとつ……頂きます」
切なそうな表情に横切る男の艶を見て、ユウナはぞくりとする。