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吼える月
第35章 希求
 

「欲しいもの……? あたしがあげれるもの?」

「はい。姫様から貰わないと意味がねぇんで」

「なにかしら」

「それはその時のお楽しみということで。姫様からご褒美貰えるのなら、張り合いが出るかなと」

「……ふふ、いいわ。サク、今までそういうことねだったことなかったし。あたしがサクに上げられるものがあるのなら、嬉しいわ」

「すげぇやる気が出てきました」


 サクは意味ありげに笑い、精神を統一する。


 イタ公。

 お前の力、使わせてくれ。


 僅かにでも確固たる力を感じられれば、それを大きくして使えるように、しっかりとお前の力を練って使いたいんだ。


 僅かでいい。

 だから――。


 
「えい、えい。骨、あっち行け!!」



 せっかくお前が守ってくれていたけど、この力、使わせて貰うぞ。


 玄武の力がないのなら、絶対的に存在するところから引き寄せるしかない。


 サクは身体の至る所にある、玄武が邪なる者を抑えている神獣の力を、ひとつに手繰り寄せる。

 そうすることでサクは、玄武の力を手にできても、サクが契約した存在を抑える枷は薄らぐことになる。

 サクと人外な者との契約の履行は、再開されてしまう。


 それでも――。

 愛おしい存在を守るために。


 俺の命を守る、玄武の力のすべてよ、今ここに集まれ!!


 突きだした両手が、薄い水色に発光する。


「サク、今よ!!」


 ユウナの合図と共に、


「はあああああああっ!!」


 サクは力を解放した。


 
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