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吼える月
第35章 希求
 


 今まで朱雀の力は感じなかったというのに、主なき力はどこから?

 あのラクダがくせ者なのか、それともここに案内されたこと自体が罠だったのか。

 ここは地下。
 砂でも流し込まれれば大変だ。

 逃げる準備をしていないサク達が、被害が出ないように。

 サクの隣には、ユウナ姫がいる。
 彼女を怖がらせないために。
 
 熊鷹がサクの元に飛んだ瞬間、地面が蠢きだし、白骨が出現したのだった。

 そして――。


「なんでここにいる!」

「きゃはははは! ラクダちゃーん!」


 放ったはずの熊鷹は、敵か味方かわからないラクダを乗せてやってくる。

 ラクダがすべての元凶だとしたら、サクはどうなったのか。そしてこちらもさらに危険な目に遭うのか。


『よいか、あの玄武が選んだ小童同様、青龍の力をあの扉に叩きつけよ!』


 勇ましく言い出したのは、かなりの難問。


『玄武の武神将と、ここから返る朱雀の力を等しくさせ、三竦みにさせるのだ!』

 シバはテオンの襟首掴んで頬を軽く叩きながら、険しい顔をラクダに向けた。

「青龍の力は……」

『出すのだ。やれ』

 シバの顔が冷ややかになった。

「人ごとだと思っているんだろうが『この石の建物はヨンガの棺だ』」

「ヨンガ……緋陵の武神将の? やっぱり嘆願の儀?」

 落ち着いたテオンが、何事もなかったように言った。

『ああ、行き着いていたのか。そうだ。我らのところも文字があり、解読した。やはりどうしても中に入らねばならぬ。我の鏡を壊さねば』

「鏡……」

 テオンが目を細めた。


"我が眠りを妨げる者 鏡の呪いで火の鳥となす"

"我の怒り実を虚に変え、汝の『鏡』の中に閉じ込める何人たりとも『鏡』を進むのは許さじ"

 
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