この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第35章 希求
今まで朱雀の力は感じなかったというのに、主なき力はどこから?
あのラクダがくせ者なのか、それともここに案内されたこと自体が罠だったのか。
ここは地下。
砂でも流し込まれれば大変だ。
逃げる準備をしていないサク達が、被害が出ないように。
サクの隣には、ユウナ姫がいる。
彼女を怖がらせないために。
熊鷹がサクの元に飛んだ瞬間、地面が蠢きだし、白骨が出現したのだった。
そして――。
「なんでここにいる!」
「きゃはははは! ラクダちゃーん!」
放ったはずの熊鷹は、敵か味方かわからないラクダを乗せてやってくる。
ラクダがすべての元凶だとしたら、サクはどうなったのか。そしてこちらもさらに危険な目に遭うのか。
『よいか、あの玄武が選んだ小童同様、青龍の力をあの扉に叩きつけよ!』
勇ましく言い出したのは、かなりの難問。
『玄武の武神将と、ここから返る朱雀の力を等しくさせ、三竦みにさせるのだ!』
シバはテオンの襟首掴んで頬を軽く叩きながら、険しい顔をラクダに向けた。
「青龍の力は……」
『出すのだ。やれ』
シバの顔が冷ややかになった。
「人ごとだと思っているんだろうが『この石の建物はヨンガの棺だ』」
「ヨンガ……緋陵の武神将の? やっぱり嘆願の儀?」
落ち着いたテオンが、何事もなかったように言った。
『ああ、行き着いていたのか。そうだ。我らのところも文字があり、解読した。やはりどうしても中に入らねばならぬ。我の鏡を壊さねば』
「鏡……」
テオンが目を細めた。
"我が眠りを妨げる者 鏡の呪いで火の鳥となす"
"我の怒り実を虚に変え、汝の『鏡』の中に閉じ込める何人たりとも『鏡』を進むのは許さじ"