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吼える月
第35章 希求
「確かに、鏡はなんだか禍々しいものに使われた形跡はあるけど」
『そうだ。ヨンガは鏡を使った嘆願の儀で我の力を奪い、我の民と国になにかをした。なにか敵がおる。ヨンガが正か邪かはわからぬが』
「それによって、鏡に近づく危険性は変わるけど……」
テオンは、青龍刀でまた一体、白骨の頭を刎ねていたシバを見た。
「玄武を助けるためにはラックーに朱雀の力を戻して、とにかくもここ緋陵にいる溶岩に居る火の鳥とやらに近づかないといけない。……ラックーが朱雀だと僕は信じてる」
テオンはシバの腕を掴んで、小声で言った。
「ラックーを信じよう、シバ」
「………」
「僕もこの中に入りたい。進まなければ、ここでただ話し込んで終わりだ。そして青龍の力を使えるのは、シバだけだ。シバが必要なんだよ」
シバの迷いを断ち切らせるように、テオンは透き通った瞳でシバを見上げる。
「やろう」
シバは……頷いた。
扉を開かないと、確かに前に進めない。
祖国に背を向けたからには、ここは進まねばならない。
「だけどこの骨、どうすればいいだろう。シバが集中できない」
『骨を石扉に投げよ。すると朱雀の力の注意はそちらに向けられる。その状態で守りの隙をつき、青龍の力を流し込め!』
その青龍の力が、あの符陣は受け付けない。
そして力も出るかどうか……。
「テオン、任せられるか?」
「シバちゃん、ユエもやる! ユエも!」
ぴぇぇぇぇぇ!
ばへぇぇぇぇ!
変な声も後に続いた。
「サクのところは?」
『姫ががんばっておる』
「ユウナだけなのか、あっちは!?」
シバが目を見開いた。
『あの姫は、玄武の守りの中におる。いまだあの状態であっても玄武は、武神将と姫を守っておるのだ。武神将は己を守る力を使う気だろう』
なにか憂えたラクダの言葉に、シバは骸骨を地に叩きつけながら言った。
「問題があるのか?」
『ないといいが……。あの小童、姫への守りを解くより自らの守りを解くようだ。それにより玄武との交信が立ち消えねばいいが』
「消えることがあるのか?」
『……なければいいが、なにやら嫌な予感もするでな』