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吼える月
第35章 希求
 

 それ以上を言い淀むラクダは、なにを思っているのかシバにはわからない。

 だがサクが、ユウナに任せながらもその道を選ぶのであるのなら、シバもそれに合わせねばならないと強く思った。

 そしてシバがそれをやるのも、ひとりでは出来ない。


「テオン、ユエ。頼めるか?」


「「勿論」」

 頼られたのが嬉しいテオンとユエは顔を見合わせ、強く頷いた。


 ぴぇぇぇぇぇ!!

 ばへぇぇぇぇ!!


「ああ…そこの動物も、ふたりを頼む」


「骨、所詮骨は骨なんだ! それーっ」

「きゃははは。ユエもそれーっ」

 赤い光が扉を攻撃しているように思える骨だけを排除する。

 ……確かに、これなら赤い光の注意はよけられる。


 シバは青龍刀を地に突き刺し、深呼吸をした。


 ぴぇぇぇぇぇぇ!!

『それ、それっ』


 ……朱雀が、朱雀の力に対抗するために、どこのものともわからぬ骨を投げつけている。

 それがどこか滑稽ながらも、それでもラクダの必死さを思えば、ラクダの陰謀のようには思えなかった。……それを隠し続けるなど、この単純なラクダには出来そうもないように思える。

 シバの身体の中に宿る青龍の力。

 それはイタチの指導でなんとか使えるようになった。


――青龍の心を思うのだ!


 青龍の、包み込むような大きな心を。


「シバが集中すると、あの赤い光がシバを攻撃しようとしてる」

 ぴぇぇぇぇぇ!!

 骨を投げるもの、骸骨からの攻撃から仲間を守るもの。


「皆、お骨を投げて!」

 ばへぇぇぇぇ!!

「危ない、テオンちゃんっ!!」

 ぴぇぇぇぇ!!

「ありがとう、ワシ」

 
 中々にいい連帯感だというのに、シバから力が湧き上がってこない。

 元々使いこなしていたわけではなかったのだが、感覚的には大海の輪郭を定められない、といった感じか。
 
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