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吼える月
第35章 希求
「青龍――っオレは強くなりたい。誰よりも強くなりたいんだ。父親よりサクより、なんでもする。皆を守れるほど強くなりたいんだ。青龍っ」
テオンがシバを見ながら言う。
「……玄武自ら他国で力を貸したのとはわけが違う。嘆願は強制。神獣の盟約には囚われないだろう。ここは朱雀が力を持たない国。だとしたら余計に成功する可能性が高くなる」
「うん。シバちゃんは強くなる。守る力を渇望しているんだから、嘆願の資格がある」
「そうだ。僕からも願い奉る。我らの神獣青龍よ。武神将ジウ=チンロンの息子、シバ=チンロンの嘆願を聞き入れたまえ!」
どんなに知識があろうとも、弱いテオンは願うしか出来ない。
"我を使役する嘆願は、我の力を最も持つ強き者しか認めぬ"
「青龍、今のオレを変えたい。頼む、頼むからオレに……皆を守る力を!!」
「青龍、どうかその力、シバに授けたまえ!」
"我を制するほどの強さがあるのなら、我必ずやその願いを聞き遂げよう"
「見て、ラクダちゃん。シバちゃんが!」
『ああ。我が青龍であるのなら、邪ないふたりの願いに耳を傾けたくなる。ならば我からも。我が同胞青龍よ、わけあってこの姿となっている朱雀である。青龍よ、シバは嘆願を聞き入れるに値する。我の国で、汝の出現を許可する!』
シバがほのかに発光する。
「青龍ちゃん、ユエだよ。シバちゃんの"覚悟"を信じて。シバちゃんは大丈夫、強くなるから。ユエが保証する。だから青龍……」
光は強くなる。
ユエとシバ、テオンとラクダは同時に言った。
「「「『降臨せよ』」」」
青い光がカッと広がる。
ど…ん、と、頭上から雷が落ちたような感覚になったシバは、体内になにかがいるのを感じた。
「我、汝の嘆願聞き遂げたり」
シバの口から、シバのものではない、低い声が出た。
それは、ギルの口から放たれていた声と同じだった。