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吼える月
第35章 希求
「これは……」
あまりの眩しさに、ふたりと一匹は目を細める。
なにか光の粒子に溢れて、目映くてなにも景色が映らない。
目が痛くなるほどに。
足を踏み出すと、さらに光源がきつくなる。
なにも見えない中で、ココココとなにかの硬質の音だけ、連続して早く響いていた。それは彼らの心の臓の音よりも数倍早く、なにも見えない中で不安さだけがかきたてられる。
「サク、サクどこ……」
心細そうなユウナの声に、前に居るサクはしっかりと手を繋いだ。
その慣れた温かさでほっとするユウナに、サクの声が届く。
「姫様、目をつむって下さい。ラックーもだ」
『しかしなにがあるのか、わからぬぞ?』
「恐らくこれは目眩ましの罠だ。この先に入れないための。以前家で親父にこの系統の罠をしかけられたんだ。目で見ようとして、目が負担かかって血色の涙が出て失明寸前だった。この光源を作っている元を絶たねぇと、このままなら早かれ遅かれ目を潰す」
罠だとそう思ったのは、ハンに培われてきたサクの直感だ。
警戒心が警鐘を鳴らしていた。
最短で罠を解除せよと。
そうでなければ、目を瞑っていても目に影響が出ると。
『小童の父親は、そんな罠をかけるのか、息子に』
ラクダが慌てて目を瞑りながら驚いて言うと、サクは服の裾を破いてそれをユウナの目に巻き付けて笑う。
「ああ。光程度はまだマシだったがな。本当に寝ても覚めても命がけだった。おかげで今、逃げ延びる術になっている。親父に感謝だ。……いいですか姫様、この布をとらないでください。とらない限りは目を開けていても結構ですが、出来るなら目をつむっていて下さい。この目隠しは万が一ということです。もし危なくなったら、俺が抱えますのでご了承下さい」
「わかったわ!」
『我は……』
「ああ、ラックーは手を繋げねぇな。でかいし固いし、抱くのも大変だ。だったら勘で俺の後ついてこい」
『勘!?』
ラクダは驚いて鼻水をたらす。