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吼える月
第35章 希求
 


『ぬ、ぬぬぬぬ』


「どうした、ラックー」

『ひとの心配をしている暇はない。見よ、あちらを見よ!』

 ラクダに言われるがまま、これから進もうとしている方向を見て、ふたりはよろけた。

 奥からこちらに広がるのは、地面の皹。

 やがてそれは下にずれて落ちた。

「下があるの!?」

『これは……』

「誘ってやがるな……」

 サクは不敵に笑いを見せた。

 ひび割れた処は鏡の大半が下に落ち、そして無事なところは……迷路のように複雑な細い道だけが残ったのだ。

 足を乗せただけでも、今にも崩れそうに細い道が。

 サクが様子を見に下を見下ろした。


 そこには、遙か下方に……溶岩が火花を散らしているのが見えた。


「イタ公を助ける炎の鳥は、ここにいるのか?」


 しかしここから落ちれば、溶岩に焼かれて死ぬだけだ。

 今残る玄武の力は三人を守れない。


 その時、なにかが後方で音がした。

「サク、サク!! 入り口が降ってきた瓦礫に塞がれちゃったわ!」

 だとすれば――。

「このまま進むか、ここで朽ちるかのどちらかを選べということか」

 サクは、好戦的に笑った。

 
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