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吼える月
第36章 幻惑
 

 
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 砂漠化した緋陵国の謎と白イタチ姿の黒陵国の神獣玄武を救うため、一行は二手にわかれる。

 ひとつは黒陵国生まれのサクとユウナ、そして自称緋陵国の神獣朱雀であるという駱駝。
 ふたつは蒼陵国生まれのテオンとシバ、謎の少女ユエと巨大な熊鷹。

 二組が行き当たった石の建物……石棺に刻まれた謎の言葉は、サクの叔母にあたり乱心したと言われる緋陵国の元武神将ヨンガ=イーツェーの、神獣朱雀への嘆願に関するものだった。

 テオン達が解読したのは、

 "我が眠りを妨げる者 鏡の呪いで火の鳥となす"

 "我の怒り実を虚に変え、汝の鏡の中に閉じ込める 何人たりとも鏡を進むのは許さじ"


 サク達が部分的に解読したのは、
 
 "偉大なる朱雀よ我が命で嘆願す 鏡より汝のきからを鏡で取り払い 悪しきちかりに悟られんことを"

 "我は未来を我が地(血?)でちりように封じ 鏡と民をきはにかくて 嘆願破られたは別にかけた我がきの呪いを発動させたり"

 意味がすべてわからないまま、突如消えた大蠍を合図に、石棺から朱雀の赤い光が放たれ、蘇った朱雀の元兵士である骸骨と共に、二組に襲いかかる。

 だがサクは、自身への呪詛である〝彼の者〟を封じる、眠れるイタチこと玄武の力を使い、そしてシバは無意識に青龍の嘆願にて青龍を呼び出すことに成功し、二組は朱雀の罠を突破することが出来た。

 サク達が進んだ内部は、白陵の神獣白虎から作られたと思われる白銀の輝硬石で出来た、鏡の迷宮が続き出入り口は塞がれる。 

 双方が解読した文字にある「鏡」と「呪い」。
 緋陵に干渉し、朱雀の力を失わせる嘆願をかけたヨンガが、狂って家族を皆殺しするに至らしめたものは、知恵を司る白虎が守る白陵の民なのか、それとも別のものなのか。

 一方シバとテオン、そしてユエと熊鷹の一行は――。


 ~倭陵国史~



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