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吼える月
第36章 幻惑
「きゃはははは。テオンちゃん、頭いいっ」
そんな三人を見て、熊鷹は頭を埋めるようにしながら、暇そうに羽繕いをしていたが、やがて首をもたげて、大声で鳴いて知らせる。
回転する円環に現われた武器の数が増えたからだ。
「とにかく、ユエは笛を吹く! で、シバ。試してみよう」
夕は熊鷹にぶら下げられて笛を吹く。
餓鬼という醜悪な魔物を鎮めたその音色は、幼子が奏でたとは思えぬほど哀切に満ちて、憂えていた。
「今だ、行くぞ」
シバの声音でテオンがシバの肩に担ぎ上げられ、猛速度の末に現われる武器などなんのその、屈んで飛び跳ねて難なくこなしていく。
「よし、やった!!」
邪気はユエの笛にて消え、シバを阻むものはなかった。
シバは軽やかに跳躍しながら、隣接する円環の道に飛び移ることに成功した。熊鷹はその移動先の円環にユエごと着地しようとしたが、邪気とは関係なく見えない壁のようなものに阻まれ、シバがユエと熊鷹を抱えるようにして一同は次の舞台へと移る。
「なんで壁みたいのがあるんだろう。そういえばここに来るまでにも数度、そんなことがあったよね。前に道があるのに行けない、というような」
テオンは腕組をして考え込む。
「もしかすると……、僕達の目で見えるものは、あてにならないんじゃないかな。だから出口に行き着けない」
このままだと、どんな円環の道筋を進んだとしても、円環の迷路を彷徨することになる。ただ直線状ではないというだけの迷路だ。