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吼える月
第36章 幻惑
「どうすれば、正しい道がわかるんだろう。すべての道を進んで地図を作っている暇はないんだし。青龍は正しい道は見えないの?」
「我の視力はこの器に準じる。しかし……、ここは朱雀の腹の中のようなもの。白虎ならわかるが、朱雀であるのなら、そこまで侵入者に完璧な策は講じていないように思えるのだ」
「それは朱雀が馬鹿ということ?」
「否。朱雀は憤怒の攻撃の神獣。我や玄武が攻撃を苦手とするように、朱雀は防御を苦手とする。それは白虎も然り。されど白虎は叡智の神獣なりて、弱みを策でなんとかして完璧に見せる」
「なるほど。だったら朱雀は馬鹿だから、必ず抜け道があると」
「否! 朱雀は愚かではあらぬ!」
青龍の慌てぶりに、テオンとユエは声を出して笑った。
それはあくまで言葉の揶揄であり、テオンもいかにラクダに変えられようとも、朱雀は愚鈍だとは思っていない。
倭陵の四国に神獣が均等に守護するからこそ、今まで均衡が保たれてきたのだ。……あの金と銀が現われる前は。
「僕達の目があてにはならないとして。僕達の目に代わる、正しく真実を映し出すものってここにある?」
見渡せども円環、そして下には溶岩。
テオンは目を細めた。
「……あるね」
シバも薄く目を細めた。
「ああ、ある」
テオンとシバは天井を見上げた。
「……赤の輝硬石。即ち、赤い鏡」
そこには赤く染まった一行が映っていた。