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吼える月
第36章 幻惑
 


 しばらくしてからシバは瞑っていた目を開く。

「進むしかない。行こう」

 シバが促した奥は、一本道だ。
 それは十分幅があるものではあるが、簡単に向こう側に行き着くような気は全くしない。

 ひた、ひた。

「ねぇ、なにか音が聞こえない?」

 ひた、ひた。

「向こうから誰かが来る」

 シバは背の青龍刀を引き抜く。

 ひた、ひた。

「ねぇ、テオンちゃん、あれ……」

 ユエが指さした一本道の奥。
 そこから現われたのは――。

「テオンか!? シバ、ユエ、ワシ!!」

「まあ、ようやく会えたのね!!」

 サクとユウナだった。

「お兄さん、お姉さん!! やった、僕達正解して進んでこれたんだ!! ねぇ、シバ」

 しかし振り返ったシバは、表情を無くしていた。

「シバ?」

 サクもユウナも、突然雰囲気が変わったシバを訝る。

 シバは、手にしていた青龍刀の柄を再度きつく握りしめると、殺気を放って、サクとユウナ目がけて振り上げたのだった。

「シバ!?」

「シバ、あたし達がわからないの!?」

 慌てるサクとユウナの声。

 ぴぇぇぇぇぇぇ!!

 ユエはただじっとシバを見ている。

「シバ、正気に戻れ!! どうしたんだよ!?」

 テオンの悲痛な声が木霊した。

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